おまけ 記憶の中の宝物 sideミウ

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食事後、私達はレストランを出るとビルの正面玄関前にあるタクシー乗り場へと向かった。 これから出張で新幹線に乗る智を見送る為だ。 明日の朝イチから打ち合わせがある智はどうしても今日中に出張先に着いていないといけない。 時間なんてないのに私の誕生日だからと最終ギリギリの時間まで付き合ってくれた。 そんな智の気持ちが嬉しくて心が温かくなる。 「これから出張なのに、こんな素敵なお店で誕生日を祝ってくれてありがとう」 「明日朝から打ち合わせがなければもっと一緒に居られたのにな」 「しょうがないよ。でも嬉しかった」 タクシーの前に着くと乗れと言わんばかりにドアが開く。 平日のせいかタクシー乗り場は混雑していなく、すぐにでも乗れる状態だ。 時間のない智は迷いなくタクシーに乗ると、私は一歩後ろに下がりドアの外に立った。 智はタクシー運転手に「お願いします」と言うとバタンとドアが閉まる。 そしてそのまま行ってしまうかと思ったらタクシーの窓が開き、智が顔を出すと歩道に立つ私の名前を大きな声で呼んだ。 「美羽!」 私は智の声に応えるように手を大きく振った。 すると智を乗せたタクシーはゆっくりと走り出す。 だんだんと遠のいていくタクシーが見えなくなるまで私は手を振った。 …ありがとう。智。 出張で忙しいのに誕生日をお祝いしてくれた。 プロポーズは失敗したけど…その気持ち凄く嬉しかった。 この人が彼氏で本当に良かった。 私はタクシーが視界から消えると駅に向かって歩き出した。 すると後ろから女性の声が聞こえてきた。
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