おまけ 記憶の中の宝物 sideミウ

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「今日は楽しかったわ。あなたの誕生日を祝う事が出来て」 私はその声につられるように顔を向けるとビルのエントランスからさっきのレストランで隣にいたカップルの女性が出てくる姿が見えた。 女性はお酒に酔っているのか足元はふらついていて、その声は甘ったれた口調で機嫌のいいのがよくわかる。 それを押さえるように支える男性の後姿。 きっと彼氏と素敵な時間を過ごせたのだろう。 私は視線を外すと駅に向かいゆっくりと歩き出した。 智を見送った今、ラブラブのカップルをガン見する気分はない。 すると男性の声が聞こえてきた。 「誕生日って2週間後だぞ」 「いいのよ、だってその日は出張でいないから。20代最後の誕生日をどうしても祝いたかったの」 「ふーん」 「ねえ、このあとはどうする?もちろんいつものホテルよね?」 「いや…仕事が残っているから帰るよ」 「えっ?仕事って…ちょ、ちょっと孝!」 …コウ? 女性が呼ぶ名前を聞くなり歩く足がピタッと止まった。 そして慌てて振り向くと、そこには呆然と立ち尽くした女性だけがいて男性の姿はない。 男性は既に女性と別れていて私に背を向けるように歩いている。 私はその男性の後姿をただぼんやりと見つめていた。 今、確かに2週間後の誕生日、20代最後って言ってたよね? 20代最後…29歳。 私の誕生日から2週間後に誕生日を迎える。 そしてコウという名前。 …もしかして隣に住んでいたあのコウ? ☆★おしまい☆★
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