おまけ 記憶の中の宝物 sideコウ

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これは俺がまだミウに再会する前の話。 「この前ねA社の社長ったらやたらと食事に誘うのよ。もう下心丸出しで困っちゃったわ」 理沙はそう言うとスーっとスマートにワイングラスを口に運んだ。 そして少し口に含ませるとやれやれと困った顔をする。 でも俺にはその表情はから困っているようには見えなくて、寧ろ自慢をしているような、挑発しているようにしか見えない。 きっと男の話でもして嫉妬させたいのだろう。 でも正直言って俺は理沙には興味がない。 だから俺はわざと興味がなさそうに返事をした。 「ふーん」 その当時、仕事上のパートナーだった理沙とは体の関係もあった。 でも恋人ではない。 他の人を好きになる事が無かった俺に仕事第一な理沙。 二人の利害関係が一致していただけの体の関係。 特定の彼女を作る気になれなかった俺に理沙は好都合だった。 付き合いやすい女。割り切った後腐れのない関係。 だから当然そこに気持ちはない。 高層ビルの最上階にあるスカイレストラン。 高級食材を使ったオードブルに年代物のワイン。 しっとりした雰囲気の中、夜景を楽しみながら食事をするカップル達。 愛を語るには最適な場所なんだろう。しかし正直俺はこういう店は苦手だ。 駅前にあるラーメン店でビールを飲みながらの食事の方がいい。 理沙から話があると呼ばれたから来てみたもの、自慢話ばかり。 用件なんかないじゃねーかよ。こんな話聞いてもつまらない。 …帰りたい。 けど、俺がつまらなさそうにしているのに理沙は気づく様子もない。 ただひたすらと自慢話をしている。 そんな理沙の話を聞くのが面倒になっていた俺はいつしか後ろに座るカップルの会話に耳を傾けていた。
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