おまけ 記憶の中の宝物 sideコウ

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「ねえ、ここって高級店でしょ?大丈夫なの?」 「大丈夫だよ。今日は1年に1度しかない誕生日なんだし気にするなよ」 「…うん」 「お誕生日おめでとう」 「ありがとう」 後ろに座っているカップルは年齢的には俺達と変わらないのだろう。 ただこういう店に慣れていないのか、背向かいに座る女性が遠慮気味に話している。 そんな女性に「大丈夫だ」と安心させる男。 なんか初々しいな。 しかも誕生日を祝ってやるのか。そりゃあ女性も嬉しいよな。 ああ、このカップルほのぼのしてていいよな。 場馴れしていない感じがいい。 理沙の自慢話より全然いい。 俺は人の話を盗み聞きする事に罪悪感を感じつつもこのまま会話を聞く事にした。 すると男の少し意地悪そうな声が聞こえてきた。 「29歳だっけ?」 「そうよ。わざわざ年齢言わなくてもいいのに」 女性はわざわざ年齢を言われた事が嫌だったのか拗ねた口調だった。 29歳かぁ…やっぱり同じ年齢だ。 そして今日が誕生日。 俺は女性の年齢を聞いた時にある事を思い出した。 確か、アイツも今日が29歳の誕生日だったよな。
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