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アイツとはミウの事だ。
ミウは幼い頃、隣の家に住んでいた学年が一つ上のお姉ちゃん。
まぁ俗にいう幼馴染みってやつだ。
でもアイツ、お姉ちゃんって感じがしなくて。
トロいし、バカだし、俺の態度にビクビクして、何か言えばいつも泣きやがって。
どちらかと俺の方が年上に思えてしょうがなかった。
こう言えばウザく感じていたと思うかもしれない。
嫌いだったと思うかもしれない。
でも俺はアイツが好きだった。
大好きだった。
好きで好きで、結婚するならミウしかいないと思っていた。
ミウに対する想い…これはきっと初恋だったんだろう。
けど俺は両親の仕事の関係でミウのもとから離れた。
もう20年近く会っていない。
…20年かぁ。
これだけ経てばミウの事なんか忘れてしまうはずなのに、他に彼女がいたって、結婚していてもおかしくない。
けど、突然の別れは逆にミウの事が鮮明に残っていて。
忘れる事なんかできなかった。
いや、他の女を好きになるなんてできなかった。
だったら会いに行けばいいのに。
好きだって告白すればいいのに。
それすらできなかった俺は付き合いやすい女としか遊ばなかった。
こうして目の前にいる理沙もその一人だ。
そんな付き合いしかできない俺は…ただの臆病者だ。
って。ミウを理由にしてはいけないな。
ミウ、今頃どうしているのかな?
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