おまけ 記憶の中の宝物 sideコウ

4/16

1637人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
アイツとはミウの事だ。 ミウは幼い頃、隣の家に住んでいた学年が一つ上のお姉ちゃん。 まぁ俗にいう幼馴染みってやつだ。 でもアイツ、お姉ちゃんって感じがしなくて。 トロいし、バカだし、俺の態度にビクビクして、何か言えばいつも泣きやがって。 どちらかと俺の方が年上に思えてしょうがなかった。 こう言えばウザく感じていたと思うかもしれない。 嫌いだったと思うかもしれない。 でも俺はアイツが好きだった。 大好きだった。 好きで好きで、結婚するならミウしかいないと思っていた。 ミウに対する想い…これはきっと初恋だったんだろう。 けど俺は両親の仕事の関係でミウのもとから離れた。 もう20年近く会っていない。 …20年かぁ。 これだけ経てばミウの事なんか忘れてしまうはずなのに、他に彼女がいたって、結婚していてもおかしくない。 けど、突然の別れは逆にミウの事が鮮明に残っていて。 忘れる事なんかできなかった。 いや、他の女を好きになるなんてできなかった。 だったら会いに行けばいいのに。 好きだって告白すればいいのに。 それすらできなかった俺は付き合いやすい女としか遊ばなかった。 こうして目の前にいる理沙もその一人だ。 そんな付き合いしかできない俺は…ただの臆病者だ。 って。ミウを理由にしてはいけないな。 ミウ、今頃どうしているのかな?
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1637人が本棚に入れています
本棚に追加