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「俺達そろそろ…」
ミウの事を思い出していると後ろから男性の声が聞こえてきた。
背を向けているからどんな表情をしているかわからないが、その声はどこか震えていて。
俺はその言葉にピン!とくるものがあった。
…プロポーズするつもりだな。
眺めの良い高層ビルにある高級レストラン。
そして彼女の誕生日。
材料は揃っている。
結婚を意識している男にとってプロポーズには絶好のチャンスだ。
きっと女性もこんなシチュエーションで付き合っている男性から言われれば嬉しく思うだろう。
断る事もないんだろうな。
…早く言え!
プロポーズの言葉を彼女に言ってやれ!
こんな場面、ドラマでしか見た事ない。
俺はこれからどんな展開になるか楽しみになっていた。
だから当然、理沙の話なんか耳に入ってこない。
すると二人の邪魔をするかのようにウエイターの声が聞こえてきた。
「メインディッシュの子羊のロースト、無花果のソース和えでございます」
「あ…」
「うわぁ!美味しそう!早く食べよう」
俺は邪魔をしたウエイターに、そして相手の女の反応に驚いていた。
…え?
お、おいっ!いい所なのに何、邪魔しているんだよ!
ウエイター!空気読めよ!プロポーズしようとしていたんだぞ!
男の方が出鼻挫かれたように唖然とした声出しているじゃねえか。
それにしても早く食べようって、この女…。
プロポーズされているってわかっていないのか?
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