おまけ 記憶の中の宝物 sideコウ

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プロポーズされようとしている事に全く気づかない女。 それよりも目の前に出された料理を食べたがっているけど、この男はどうするつもりなのか? 諦めるか? それとも再度チャレンジするか? チャレンジ…じゃあ、もし俺だったらどうする? もし目の前に大人になったミウがいてプロポーズの邪魔をされたら、もう一度チャレンジするか? というかプロポーズ自体できるかわからない。 いや、わからないじゃなくて自信がないんだ。 そう。俺はミウの反応が怖くて会う事も出来ない弱虫なんだ。 でも…こんな俺でもあの時、あの公園でプロポーズした。 あれは20年近く前。 引越前日に自分の気持ちをミウに伝えた。 「ミウ、俺がおまえをもらってやる」 ミウはあの時、不思議そうな顔をしてたっけ。 引っ越す事を話していなかったし、きっと意味がわからなかっただろう。 それに考えてみると返事も貰ってない。 まぁ、そりゃあそうだよな。突然プロポーズされて驚かないヤツいないもんな。 でもそんな事はどうでもいい。 言葉は足りなくてもミウに自分の気持ちを伝えた。 あの時の俺はそれだけで十分だった。 そう。これは俺が言った最初で最後の告白。 記憶の中の宝物だ。
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