おまけ 記憶の中の宝物 sideコウ

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「行かねえよ」 俺は目の前にあるシャンパンをグイッと飲むと理沙の顔を見ながら言った。 理沙は予想していたのか顔色一つ変えずに不敵な笑みをしている。 「そう言うと思ったわ」 「悪いな。俺はあの会社が好きなんだよ」 「そう。でも私が作る会社はあなたの夢を叶えられる」 「夢?」 「海外での仕事。これは私達の夢だったじゃない」 …海外での仕事。 確かに以前、理沙と語り合った事があったっけ。 ゆくゆくは海外で活躍できるようになりたいって。 それを理沙は叶えようとしている。 俺も一緒にって誘ってくれている。 でも…。 「そうかもしれないけど、俺は会社を辞めてまで叶えようとは思わない」 そう。俺はあの会社を辞めてまで夢を叶えようとは思わない。 高科、田中と仲間がいるからどんな仕事もこなしてきたんだ そんな奴らを置いて独立なんてできるはずもない。 すると理沙は「しょうがないわね」と呟くと軽く頭を横に振った。 でも諦めたようには見えない。 余裕の笑みのまま、まるで子供をあやす様に言った。 「まぁ突然言われても困るわよね。まだ時間があるからじっくりと考えて」
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