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食事後、俺はレストランを出るとビルの正面玄関へと向うと、さっき後ろにいたカップルがタクシー乗り場にいた。
どうやら男だけが乗っていくみたいだ。
男が乗り込むとドアがバタン!と閉まり、外に立っている女はタクシーの中にいる男を見つめている。
そしてタクシーが発車するかと思ったら窓が開き、男が顔を出した。
「美羽!」
…ミウ?
俺は男が呼ぶその名前に足が止まった。
今、確かにミウって言ったよな?
今日が29歳の誕生日。
そしてミウと言う名前。
これって…もしかして隣に住んでいたミウ?
幼い頃からずっと想い続けているミウ?
ミウと呼ばれた女は男に応えるように大きく手を振っている。
俺はどうしても顔が見たくなり、彼女のもとへと駆け寄ろうとした。
するとトイレから出てきた理沙の声が聞こえてきた。
「ちょっとー待ってよー」
理沙は俺を見つけると飛びかかるように抱きついてきた。
そして相当酔っているのかトロンとした瞳で俺を見ている。
きっとこの姿を見たら恋人だと思われるだろう。
例え違ったとしても…こんな姿見せられないな。
俺は「はぁ」と溜息をつくと彼女に背を向けた。
それから半年後、俺は小母さんからミウとの結婚話を持ち掛けられる。
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