1637人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「あっ!コウ、あれ行こう!」
ミウは何かを見つけたのか、そう言うとするりと手を離し、ふらふらと人混みに紛れて行った。
それはまるで初めてお祭りに来た子供がはしゃいでいるみたいで。
俺が言った事なんか聞いてなかったんじゃないかと思ってしまう。
「逸れるなっていったばかりだろ…ったく、しょうがねーな」
俺はミウを見失わない様に追いかけると、少し離れた場所に立ち止まっていた。
そこは水洗い地蔵が設置してあり、洗う事で寿命が延びると言われている。
「ねえ、洗ってあげようよ」
「いいけど」
「じゃあ最初は私ね」
ミウはそう言うと一歩前に進み柄杓を持ち、地蔵に水をかけはじめた。
1回、2回と清らかにするかのように、満弁に。
そして洗い終わると俺に向かってニコッとした。
どうやら満足したみたいだ。
そんなミウを見ていると無性に俺もやりたくなってきた。
だから俺も一歩前に進むと置いてある柄杓を手に取り2、3回地蔵に水をかけ洗った。
「はいっ」
洗い終わり、クルッと振り向くとミウがハンカチを差し出してきた。
どうやら俺が洗っている間に用意していてくれてたらしい。
「ん。ありが…!!」
俺はそう言うと渡されたハンカチを見た瞬間、ハッとした。
だってこのハンカチは…。
最初のコメントを投稿しよう!