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白地に色鮮やかな小さな花が沢山散りばめられてるハンカチ。
俺はこのハンカチを見た事がある。
数年前のあの時、俺の後ろにいた女が持っていたものと同じものだから。
そしてその女はミウと呼ばれていた。
……こんな偶然そうはないよな。
あの時の女はやっぱり…?
「なあミウ、これって…」
「ん?このハンカチ?ああ…引き出しの奥にあったのを最近見つけたの。私のお気に入りだったのにね。コウ、早く手を拭きなよ、風邪ひいちゃうよ」
ミウはそんな俺を不思議そうな顔で見ていたが、言い終わるとはにかんだ笑顔を見せた。
その笑顔を見た瞬間、心の中のモヤモヤが晴れていくのを感じた。
そうだ。ミウだったんだ。
後ろにいた女はミウだったんだ。
あの時にすぐ側にいたかと思うと嬉しくて顔がニヤけてしまう。
だってもし、プロポーズが成功していたら俺達はこうして結婚できなかったもんな。
…良かった。あの時、プロポーズが失敗して。
俺はこの運命が嬉しくて思わずミウをぎゅっと抱きしめた。
「ちょ、ちょっとどうしたの?」
ミウは人前で突然抱きしめられた事に驚いたのか、慌てて俺から離れようとする。
でも俺は離そうとはしなかった。
周りの目なんか気にならない。だってミウは運命の人だから。
だから人目を気にせずに強く抱き締めた。
そして耳元で囁く。
「いいから」
ミウ…俺達はこうなる運命だったんだよ。
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