おまけ 記憶の中の宝物 sideミウ

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智とは同じ会社の同僚で付き合ってそろそろ1年になる。 部署も一緒でいつも見てきたが、私は彼を恋愛対象と思った事が無かった。 そんな彼からの告白で始まった付き合い。 恋愛対象として見れなかった私はとりあえず食事に行くような仲だったらいいだろうと軽い気持ちだった。 でも私に対しての真摯な態度。 何にでも一生懸命取り組む姿にいつしか好意を持つようになって。 今もこうして誕生日を祝ってくれる気持ちが嬉しくて。 気がつくと自然と好きになっていた。 智はシャンパングラスを手に取り持ち上げると微笑みながら言った。 「お誕生日おめでとう」 「ありがとう」 「29歳だっけ?」 「そうよ。わざわざ年齢言わなくてもいいのに」 私は口を尖らせながら言った。 今日は29歳の誕生日。20代最後の年だ。 当然だけど来年は30歳。もういつまでも若いと言える年齢ではなくなる。 それをわざわざ言うなんて…女の人は年齢に敏感なのよ。 特に29歳は結婚適齢期でもあるんだし。 でもまっ、今日は許してあげる。 こうしてお祝いしてくれるんだから。 …でも結婚かぁ。 って、まだまだそんな気しないけどね。 私はシャンパンをグイッと飲み干すとにこやかに微笑んだ。 すると智は視線を下に落とすと、どこか余所余所しい顔をしながら言った。 「そうだよな。…なあ」
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