おまけ 記憶の中の宝物 sideミウ

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智は唇が震えているせいか上手く言葉に出来ないみたいだ。 私はそんな智を目を丸くしながらきょとんとしていた。 …智? これってもしかしてプロポーズ? いくら鈍感な私でもその様子から言葉に出来なくても何を言いたいのかわかる。 付き合い始めて1年近く、私も29歳。 確かにそろそろ結婚の話が出てきてもおかしくはない。 しかも夜景が綺麗に見える高層ビルのレストラン。 プロポーズには最高のロケーションだ。 …結婚かぁ。 そりゃあいつかは迎えるものだと思っているけど、今は心の準備が出来ていない。 でも不器用にも真剣に伝えようとしている智の真剣な顔を見ていると無視するわけにもいかない。 私だって智が好きなんだし、結婚するなら彼しかいない。 だからちゃんと向き合って受け入れないと。 そう思うと自然と肩に力が入って思わず背筋がシュンと伸びる。 緩めていた太ももにも力が入る。 彼の顔をじっと見て、話を真剣に聞かないといけない。 なのに、私としたらこんな時に限って…。 「あっ!」 「何?」 智は驚いた顔をしたかと思うと眉間に皺を寄せた。 きっと話を遮られた事を不審に思ったのだろう。 さっきはウエイターが料理を運んできちゃったし。 そして改まったところで今度は私だ。 私はそんな智を申し訳なく思いつつ、バツが悪そうに床を指さした。 床には膝にのせていたハンカチが落ちている。 智の話を聞こうと太ももに力を入れた時にヒラヒラと落ちていったのだ。 「ごめん、ハンカチ落とした」 私はそう言うとハンカチを取ろうと床に手を伸ばした。
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