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『ンッガッフッフッ……え? 何も食べてなんかいませんよ? ちょっと小腹が空いて……なんてことは絶対にないですよ?』
艦娘達の会話が俺の頭の中に流れ込んでくる。
第一艦隊のメンバーは旗艦に五十鈴、そして順番に鈴谷、比叡、榛名、霧島、赤城である。
『ゴホン……それでは、みんな。共に行こうぞ激戦の海へ!』
『出撃します!』
艦娘達は海に向かって走り出し、そのまま海に向かって跳び上がる。
そのまま海へと落下する艦娘達……とはならず、艦娘達はふわりと浮遊している。
海の上にはどこからともなく本物の艦が現れ、艦娘達は各々、自分のリアル艦の上で浮遊している。
そして艦隊の上には、提督である俺も浮遊している。
俺の本体は司令官室にいる。
艦隊の上にいる俺は魂のような存在で、一種の幽体離脱のような現象が起きている……と、科学者に説明されたことがある。
ちなみに海の上に現われたリアル艦も、幽体離脱と同じような理屈で姿を現しているらしい。
海にリアル艦が現れるたびに、艦にも魂が宿っているのだなと、俺は感慨深い気分にさせられる。
『んんん? あれ、なぁに? ……あれって艦娘だよね~?』
鈴谷は目を細めて海の上にいる艦娘を見つめる。
母港からほとんど離れていない目と鼻の先のような近距離に、艦娘がいる。
『ん? んん? んんん? うわッ、あれって、マジやばじゃん?』
軽巡洋艦の上で浮遊している艦娘は、真黒い衣装に身を包んでいる。
なによりも驚かされたのは、海上にいるリアル艦は軽巡洋艦長良型2番艦、艦娘はどう見ても五十鈴である。
『これから出撃? ちょうどよかった、探す手間が省けたわ』
頭の中に声が流れてくる。
真っ黒い衣装の艦娘がテレパシーを使って声を飛ばしてくる。
榛名は鋭い目で真っ黒い衣装の艦娘を睨みつけ、身構える。
『あなたは誰? 何者?』
真っ黒い衣装の艦娘はザザァッとリアル艦を進めて、こちらにやってくる。
彼女がこちらに近づくにつれ、彼女が只者ではないのが伝わってくる。
彼女から発せられている禍々しいオーラは、ひどく不安で、不快で、不気味に感じる。
榛名以外の艦娘達も彼女の只ならぬ雰囲気にあてられ、身構えている。
『ふふッ、そんなに警戒しなくてもいいでしょう?』
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