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「イテッ!イテッ!殴るな!」
「真面目に話してるでしょーが!」
「分かった!分かったから!」
渋々起き上がった南井恭平。
手を引かれて向き合って。
「南…恭平は、私が外で働くこと、嫌いなんでしょ?反対って言えばやらない。」
「…どうしてそう思うんだ?」
「だって、奥さんだし。」
「理由になってないよ。」
「…小さい頃、ママが言ってた。奥さんは旦那さんを立てるものだって。
些細な決定でも旦那さんの意見を聞いて、それを踏まえた上で行動しなさいって。
うちの親、姉さん女房だからパパなんか年下の癖にって思っていたけど、ずっとそんなママを見てきて、同じ立場になって分かった。
家族のトップだってことを認めなさいってことだって。」
「…ちょっと感動するな。」
「でしょ?だからね、ママはこ」
「それなのに、まずお兄ちゃんに相談しようとぬかしていたこの口はどういうことだ?咲。」
「先に思ったのはお兄ちゃんじゃないもん!」
「………え?」
「おじさんだもん!」
「ますます悪いわーーー!!」
「いひゃい!いひゃい!」
しまった!本当のことを言ったら怒られた!
でも、直ぐに頬を撫でられて。
「俺は、働くのが嫌だという訳ではないよ。反対って訳でもない。」
「え?でも、恭平は私に専業主婦になって欲しかったんじゃないの?」
「んー。願望のひとつではあるが、お前をそこまで束縛するほど鬼畜じゃねぇよ。」
鬼が鬼じゃないと語ってるよ…おい。
「ただね、俺が欲しいのは"行ってきます""ただいま"の返事をくれる相手。結構嬉しいんだぞ?そういうの。
その相手が咲だから、どんなに嫌でも仕事頑張ろうって思えるし、疲れていても疲れが吹き飛ぶ。」
「……………」
おお…なんかこっちの方が感動した…
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