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「…私は以前、会社で咲と働いている時分、彼女を守れなかった経験がございます。
それは今でも苦い思い出で…今でも自分を悔いてるほどです。
だから、一緒になるときに、何があってもこいつは守ると決めました。」
「……それで?」
「こちらの会社で苛めなどないとは思いますが、予防線を張っていただきたい。
…私はこの会社の社員ではなく、社内で何か起きたとすれば守ろうにも守れない。だからこうしてお願いに参りました。」
「……なるほど。その予防線を聞こう。」
「…咲を身内だということは伏せていただきたいです。」
……えーーーーと。
もしもし?南井さん?
多分、知ってる人間は多いと思いますよ?
しかもなんで隠す必要があるんですか?
意味わかんねーぞー。コラー。
「…!ああ!そういうことか!」
「了承していただけますか?」
「もちろん。当たり前のことだよ。」
「良かった…ありがとうございます!」
…スゲーーー…通じちゃったよ。
おじさん、南井恭平通訳機でも持ってんのかな?
それにしても予防線が身内だと伏せることって?
いやいや。
私は"keep out"と書かれた黄色のテープ内側にポツンと自分の席だけ離れ小島になってる自分を想像しちまったぜ!
殺人現場かよ!うぉい!
なんて突っ込んだりして。
……ウケる。私。
「勤務時間や部署は、その時に決めてもいいかい?」
「ええ。もちろん。そこまでは口出ししませんよ。ちゃんとした面接で話し合って下さい。」
「じゃあ明日早速面接のスケジュールを」
……え?明日!?嫌だ!ちょっと!
「…はい!」
と。思わず挙手。
「はい。咲ちゃん。」
と。ノリノリのおじさん。
「はい!私、1ヶ月後じゃないと入社しない!やだ!明日の面接は断ります!」
「……っっっ……咲ーーー!!」
「嫌だ!譲れない!旅行行ってから!」
「…えーと。南井くん?」
「は……ハハハ…すみません……」
ポカンとしたおじさん。
苦笑いの南井恭平。
フンッ!とふんぞり返った私。
……なんだこりゃ。
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