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「最近、ずっと働き詰めで、帰ってからも仕事を持ち込むほどだったんです。
咲との時間を取れなくて、一月後に少し時間が空いたので、結婚記念に旅行にいく約束をしたばかりなんですよ。」
「…ああ、そうか。そろそろ1年経つのか。」
「はい。仕事を始めるなら、旅行に行った後の方が先方にもご迷惑かけないと思ってそうしろと話したばかりだったんです。」
「そう!旅行は行く!1日1,2時間じゃない!ずっと一緒にいれるの!」
「1,2時間?南井くんはそんなに忙しいのか?」
「時期的なものですけど…」
「榊のせいだよ!上司面して!」
「いや。上司だろ。」
「榊?…ああ!あのときの彼か!なかなか肝の座った奴だと思っていたが…南井くんの上司だったか。」
「………ええ。………まぁ。」
………グハッ!
しまった!自ら榊の話を振ってしまった!
確か、ここに連れてきたときは、南井恭平を無視して会社を辞めた日!!
南井恭平の言う"苦い思い出"の一つ!
チラッ
と。様子を伺う。
「……………」
「………ぐっ………!!!」
……鬼降臨してますーーー!!
見なきゃよかった!
これか!無言の威圧とやらは!
「咲。後で話し合おうな?」
ニコッ
…うあああ!殺される!
怖い方のニコッだ!
(ペナルティ…100だなぁ…?)
そう聞こえるのは私だけでしょうか?
「そうだな。だが、こちらとしては直ぐにでも入って手伝って欲しいんだよ。旅行の日は前以て言ってくれたら善処する。」
「しかし、入社して直ぐ休むとなれば…」
「策を講じる。心配するな。」
「「……………」」
ニヤリと笑ったおじさんが、何とも不気味で。
南井恭平と私は一瞬固まってしまった。
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