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なんだかものすごーく機嫌が良さそうなのは気のせいか?
でも、それより思うのは、先ほどの言葉の意味。
「南井さん?」
「ん?」
「さっきおじさんに言ったこと、何?」
「身内だと言うなってこと?」
「うん。知ってる人は知ってるんじゃないかな。よくwoodに来てるし。お兄ちゃんも出入りしてた頃があったみたいだし。」
「そうなの?…まぁ関係ない。
要するに、お前を採用するときは、ちゃんと入社試験とか面接とか、普通の社員と同じように入社させて、コネ入社じゃないって示せと言ったんだ。」
「当たり前じゃないの?」
「いや。ちょっと気になったから言ってみたらビンゴだった。」
「…試したってこと?」
「そ。コネで入る奴は珍しくないけど、それが原因で変な噂や苛めが怖い。
一番怖いのは、お前を利用すること。」
「……利用って?」
「お前を楯にしたり踏み台にしたりして、社長に媚を売るんだ。」
「まさか今時そんな人…」
「たくさんいるよ。俺はマクベスで見てきたしね。巧妙な手を使って少しでも上にのしあがりたいとバカっぽいことをするんだ。」
「ふーん。真面目に働いてれば、いくらでも昇進できるのに。」
「それに、遠藤咲は出さないんだろ?俺の補佐だった頃の無表情な姿。」
「そりゃ…今は南井咲だもん。woodで働いてるわけでもないし…必要がないでしょ?」
「ん。それでいい。咲の名字が変わってるだけでも守られるものもあるはずだ。
無表情じゃなくても守られる。それに、俺がいないのも守られる。」
「…何それ…」
「過激なやつらがいないってこと。…マクベスでは榊さんが掃討してくれたけどな。」
よく分からないけど、南井恭平が私を守ろうとしてることは分かった。
目に届かない分、そういう面で影から支えてくれてるんだ。
「腹減ったな…飯食いに行くか?」
「あ。…うん。」
「…なんだ?」
「いや、もう仕込んでて…」
「そう?じゃ、帰って食う。お前の手料理が一番いい。」
こういうところも、私だけに甘い南井恭平。
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