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私がこうして犬と南井恭平を取り合ってるのには訳がある。
南井恭平は仕事が忙しくなってきて、毎日山のように仕事を持ち帰ってくる。
帰宅するのも少し遅い。
大体21時前後。
それからお風呂やらご飯やら済ませて、23時を回ると机に向かってしまう。
プロジェクト責任者の立場ゆえ、その忙しさは分かってるけど、二人で過ごせる僅かな時間まで犬に奪われてしまって。
「あー…もう…23時回っちゃった…」
シャワーを浴びながら、時計を見れば部屋に閉じ籠ってる時間が過ぎてしまった。
……チッ……あの犬……
どうしてやろう……
結局、今日は諦めて、お湯を張り長風呂することにした。
「…クソー…でも可愛いんだよな…駄犬のくせに…」
と。どうしても許してしまう私の方が可愛がってるに違いないバカなのだ。
30分ほどゆっくり入ってリビングに行くと、ミラクルは自分の部屋でスヤスヤ寝ていて。
南井恭平の姿は既になかった。
いつも通り、アイスコーヒーをいれて、南井恭平の部屋に運ぶ。
「…南井さん。コーヒー。」
「ん。ありがとう。」
「明日は何時に出るの?」
「7時くらい。」
「はーい。」
はい。まともな夫婦の会話終了。
チーーーーーーン
はっ。
なんか、頭の中で鐘の音が鳴ったし。
頭をブンブン振って、キッチンに入ると、朝のお味噌汁の準備をしながら、貯まった洗い物を片付けていく。
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