春 #2

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春 #2

始めの頃、恐怖だったのは電話だ。電話は一日中なっていたが特に営業がいる朝と夕方は常時電話がなっているという状態だった。 配属されてすぐ先輩社員の石原から言われたことは3コール以内に電話を取ることだった。 「電話が鳴りっぱなしになってると課長に怒られるから。」 という事だった。課長本人からも 「電話取るのは新人の役目だぞ。」 と脅しのように言われた事もあった。私も先輩も電話中の時、営業が取らないと課長がすごく恐い顔で睨みながら愛想よく電話を取った。 心の中では私も電話中なんだから仕方ないじゃない!と反論してみたが課長が蛇のように冷たい目で睨んでいるのを見るとすくんでしまった。 そんな訳で電話が鳴りつづけるとプレッシャーで私はびくびくした。 電話に出たら出たでまた恐怖だった。顧客名が覚えられなかった。筆頭のお得意様のうちの社の担当者からの電話に対し 「失礼ですがご担当者様はどちら様ですか?」 と聞き返し相手にムッとされた。恐ろしい課長の顧客だったため 「大手の得意先の会社名と担当者名くらいは覚えろ。」 とまた叱られた。先輩は先輩で大手顧客と担当者名くらいは覚えるように教育しろと同時に怒られた。 睨みをきかせながら冷たく突き放すような言い方が陰険で嫌な感じだった。 先輩たちも課長の事を虫のように嫌っていた。私もものすごく怖くて大の苦手だった。
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