春の夜の出来事

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20時を少し回った頃駅に着いた。駅から早川の会社に電話した。事務の女性ではなく男性が電話に出た。 「川村と申しますが早川さんはいらっしゃいますか?」 「少々お待ち下さい。」 と言って保留になった。保留が解除され 「お待たせいたしました。」 と早川の声が聞こえてきた。 「今、駅?」 「はい。改札出たところです。」 「じゃあすぐ出るからそこで待ってて下さい。」 電話は切れた。 5分後会社入っているビルの方向から早川がやってきた。私を見つけてにっこり笑った。 「ごめんね。待たせて。」 「いいの。全然。急に電話しちゃってごめんなさい。」 私は言った。 「いや、今日はアポも入ってなかったしキリがないからたまにはいいよ。」 早川はそう言った。 「いつものとこでいいかな?」 「うん。」 早川は私の手を取って歩き出した。並んで歩くといつもどきどきした。早川のスーツは彼の煙草の匂いがした。そんな早川の匂いに包まれてみたいと思った。 いつもの店でビールを飲みながら少し料理を食べた。早川は私に会社の様子を聞いた。私は愚痴っぽくならないように気をつけながら会社の事を話した。 全く違う業種の事なので時々早川が何か質問したり私が答えたりした。軽めに飲むと早川が 「そろそろ出ようか。」 と言った。私は 「うん。」 と同意した。
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