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真っ赤な顔で席に戻った。先輩が小声で
「どうしたの?」
と聞いた。
「名前を間違えてしまって。一文字抜けてたんです。」
と私は答えた。先輩はただ
「ああ。」
と言って納得した。
確かに名前を間違えずに入力しなければいけないとは教えられていた。でもこの時までそれがいかに大事な事かわかっていなかった。
先輩は名前がたとえ一文字でもパスポートの表記と異なっていた場合、最悪のケースとしては別人とみなされ搭乗出来なくなったりする事がある。
事前に気づいて訂正しようとしてもステータスがタイトだったりするとノーネームチェンジがかかって訂正出来ない場合がある事を説明してくれた。
私は不安になり原田課長のところにもう一度行った。恐る恐る聞いた。
「あの、すみませんでした。それで名前の変更は出来たのでしょうか?」
課長は表情ひとつ変えずに
「リクエスト上げた。まあ大丈夫だろう。これからは気をつけろ。」
と言った。低い声が恐ろしい。目が怒っている。
「はい。気をつけます。」
やっと言って自分の席に戻った。
「今日暇だったら飲みに行かない?」
石原先輩が誘ってくれた。
「はい。いいんですか?」
「うん。早くやって早くあがろう。」
すっかり落ち込んでいたのだが先輩が元気づけてくれた。
ぐずぐずしていると仮払金が出なくなってしまうので急いで翌日の準備をしてから退社した。
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