共鳴

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ほとんど毎朝課長と偶然一緒になった。 私は有楽町から昭和通りへ向かって歩き課長は松屋の前で地上に出てくる。ちょうど松屋の角あたりで鉢合わせになる。 課長が苦手だった頃はちょっと離れた位置から課長の姿を認めるとわざとゆっくりゆっくり歩いてタイミングをずらしたものだ。 今はタイミングを合わせようとしてその方向に課長を見つけると小走りで追いついて一緒に会社に向かった。 以前は張り切って出た電話の相手が課長だと途端に緊張し固くなったが今では電話口からビロードのようになめらかなテノールで 「原田です。」 という課長の声が聞こえると一気にテンションが上がった。
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