真夏の夜

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店を出ても課長は何事もなかったようにすたすたと歩いていた。とりあえず間があかないようについていった。 皆が有楽町方面に歩いていく。こんな中でみんなを撒くなんて無理というものだ。 課長の周りにも人はいたし私もナオと並んで歩いていた。いつもの流れなら東京駅まで一緒だ。 マリとサトミは有楽町線だったからJRの手前で別れたけれど皆をどうやって撒いたらいいか、とうとう駅まで来てしまった。 皆、二次会に行く、行かないで立ち止まってうだうだしている。私はなんとかその人の輪から離れて改札の手前まで来た。課長が脇に滑り込んできて 「行くぞ。」 と言った。みんなはまだ少し離れた後方にいた。 「走れ。走って反対側の出口からでるぞ。」 後方を確かめながら課長が言った。 次の瞬間、課長は私の手をぐっと掴んで改札を通り階段を駆け上がった。急いでホームを駆け抜けた。 息を切らしながらホームの反対側まできて後ろを振り返ってみた。階段を上がってくる人の中に知った顔は見えない。まだ階段下で二次会の店を探しているに違いない。 撒いたのだ。私は課長に手を引かれるまま改札を出た。
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