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午後、アメリカ大使館から赤坂方面に歩いている時だった。
「カワムラミズキ!」
フルネームで呼ばれて辺りをキョロキョロ見回した。
「ああ、加藤くん。また会ったねー。」
ユキの彼氏だった。ユキの彼氏であり私はバイト仲間だったからよく知った間柄だった。
「渋谷でも偶然だし。よく会うねー。」
そういえば加藤の会社はこの辺だったかもしれない。
「”よく会うね”じゃないよ、カワムラミズキ。」
加藤は私をいつもフルネームで呼んだ。
「あの人妻子持ちだって?ユキから聞いたけど。」
「子供はいないよ。」
私はすかさず訂正した。
「だめだよ。そんなのやめたほうがいいよ。」
私は内心なんで加藤に言われなきゃいけないんだとちょっとムッとした。でも軽く流す事にした。
「ダメって言うなら誰か紹介してよ。」
本心ではなかったけれど私は言った。
「わかったよ。紹介するから必ずやめろよ。」
加藤は真剣に言う。
「はいはい。じゃあ本気で紹介してくれる気あるなら連絡ちょうだいねー。」
「連絡するから別れろよ。」
「じゃ、急いでるからまたね。」
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