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揺らぎ #2
6月の始めのある午後の事だった。
まだ梅雨入りしていなかったが空気はじめじめとした湿気をはらんで重く、髪は朝念入りにブローしてもすぐに膨らんで形が崩れた。外出するには嫌な季節が始まろうとしていた。
そろそろデリバリーに行く時間だった。
その日に届ける予定の航空券はぎりぎりまで発券を待たないと発券したそばから変更が出てVOIDしなければいけなくなる。
私は発券した航空券とJR券をチェックして航空端末のジャーナルにインボイスの番号を書き込んでおいた。
こうしておけばカウンターを閉めてからその日に発券した分の航空券とインボイスを締める作業が楽になるからだった。
セットアップも済んだので外出するのに折りたたみ傘を持とうかと迷っているときカウンターに人が入ってきた。
また出遅れたと内心思いつつ
「いらっしゃいませ。」
と顔を上げた。
ヒカルだった。先日と全く同じタイミング。まるでデジャヴュだった。
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