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「本当に俺の前から消えてしまうんだな。」
長い沈黙の後で課長は言った。
「ごめんなさい。」
私はそっと言った。
「いつ?」
「今月いっぱいで辞める。もう支店長に話して了承された。」
課長は黙っていた。
帰り道、いつものように手をつなぎながら歩いた。たった一度の課長との朝も新宿で別れた。
今新宿の街の中で、雑踏の中で、私たちは抱き合い最後のキスをしていた。人目もはばからず涙がこぼれるのを止めようともせず。
静かに課長は私を離した。
私は溢れる涙をぬぐいもせず、くるりと課長に背を向けた。そのまま振り返らなかった。
そうして私は課長と別れた。
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