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最後の出勤日。
花束と大量の荷物を抱えて会社を後にする時、課長の姿はなかった。少し前、外出先から電話がかかってきた。
「いよいよお別れだな。お前と働けてよかった。お疲れ様でした。ミズキ、幸せになれよ。」
課長は一言一言、噛んで含めるように言った。受話器からでも課長の万感の思いが伝わってきた。
私は涙を懸命に堪えるのがやっとだった。周りの目がなければこらえられなかったはず。それでも最後には涙が溢れてしまった。
「ありがとうございました。」
入社以来課長と一緒にした様々な光景が脳裏に浮かんできた。
課長がずっと私を支えてくれた。育ててくれた。いつも私を見守っていてくれた。課長がいなかったらこれまでやってこられなかった。
「本当にありがとうございました。」
それしか言えなかった。泣きながらそう言って電話を切った。
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