明日が見えない 第1話

トシヒロ

「お先に失礼します。」

私の職場は定時の退社時間が遅い。でも残業は前もってきまっている時しかないので退社後の予定はたてやすい。
予定といっても誰かと会って簡単に食事をして、デザートでも食べるかのようにセックスするだけだ。

今日は会社の外線電話にトシヒロからかかってきた。

「ケイタイにかけてくれればいいのに。」

「だって仕事中はあんまりチェック出来ないんでしょ？
今日ダメだと思ってたんだけどやっぱり早く上がれそうになったんだ。だから会おうよ。」

（ダメって言ってたじゃん…）

「うーん、いいよ。少し遅くなるかも…」

「何時位に来れそう？」

「19時過ぎ位。19時15分位かな。」

「わかった。俺もそれくらいになるよ。」

「じゃあ、後でね。」

特にお洒落はしてきていなかった。トイレで急いで化粧を直す。マリンノートの大好きな香水をつけた。
髪をチェックして唇にはグロスを乗せる。出来上がり。

いつものように浮足立ってしまう…

別れがつらいのはわかっているのに。