ヒロアキ

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さっき駅から来た道へと出て少し歩いた。 ヒロアキは立ち止まって駅の方向を指さしながら 「覚えた?こっち行くと駅ね。店はこっち。」 と反対方向をさし、そちらに歩き出した。 「ちゃんと全部覚えるんだよ。」 と幼い子供に教えるように言った。何だか落ち着かない気分だったが黙ってついて行った。 「何を作るの?」 私が聞いた。 「そりゃあ勿論カレーだよ。俺はカレーが好きなんだ。覚えといてね。」 「うん。」 私は答えながら、ちょっとペースに巻き込まれているような気がした。でもその時はそれほど不快に感じなかった。 買い物の最中もあれはここで買う、これはここの方が安いからここで買うとか細かい法則があるらしく 「だんだんとでいいから覚えてね。」 と言われた。 お腹も空いてきたので戻ると急いで支度をした。 狭くて勝手もわからず手間取ったが何とか奮闘した。鍋やキッチン用品の類も足りなくていちいち洗わなくてはならず時間がかかった。 その間、ヒロアキは 「何か手伝おうか?」 と言いつつウロウロしては邪魔ばかりした。 「ちょっと本当に止めて。」 と私が少しムッとして言うまで、料理している私の後ろから耳に息を吹きかけたり背中から抱いて胸をまさぐろうとしてみたりしてきた。 そんな動作に私は欲情するよりむしろ苛々した。
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