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「他には無いだろうな」
「もう無いよ。はい、返しましたから。じゃあね。」
と言って晃司と私の脇をすり抜けて出ていった。男も小声で
「お邪魔しました。」
と言って逃げるように階段を降りていった。
「ったく。」
晃司はまだ怒りがおさまらないらしかった。
私はおずおずと
「どうしたの?」
と聞いた。晃司は
「あいつ、自分ちより便利だし親もうるさくないからって勝手に俺んとこ使いやがって。」
と私なんかいないかのように、独り言のように言ってから急に思い出したように
「ああ、ごめん。本当、ごめん。」
と私に言った。
私は思い切って
「元カノ?」
と聞いた。
晃司はぽかんとして
「妹だよ、妹。腹違いだけど。」
と言った。
(腹違いって?)と思ったが私から聞いてはいけない気がして深追いしなかった。
「私はてっきり彼女かと…」
「は?俺、妹じゃなかったらあんなのとは、絶対かかわらないぞ。」
と晃司は言った。
「妹さんか。なんだ。気にして損した。」
私は心底安心して言った。
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