意味のあるもの

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家はすぐに決まった。 午前中から4件程、物件を見学してその日のうちに契約した。 晃司も私も勤務先の駅は同じなので職場の沿線にした。 それから引越しの日までは様々な手続きで忙しかった。 私は有休を申請して会社を休み、役所の手続きなどをしなければならなかった。 引越し自体は荷物も少なく簡単だった。 搬入が朝早く終わると、夕方には一通りの掃除までは片付いた。 家具も何も無い部屋で私たち二人の生活が始まった。 週末の度に出かけては少しずつ必要なものを揃えて行った。 引越し当初はカーテンとベッドくらいしかなかった。 私も晃司も経済的に余裕はなかったけれど貯金を出し合って新しい生活がスタートした。 二人で暮らして行くために新しく口座を作り、給与はその口座に振込んで一緒にやっていく事にした。 試行錯誤しながらなんとか一ヶ月が過ぎ、二ヶ月が経とうとしていた。 その頃には周囲の人々も私と晃司の関係を知るようになった。 最初はまず蔵之介に報告し、私はリカに打ち明けた。 が、私は自分の両親には秘密を通した。 晃司の家については晃司の事は無関心だった。そもそも晃司の肉親は父親しか存命しておらず、複雑な家庭環境に育った事を私も聞いていた。 もうすぐ長い冬が終わり4月になろうとしていた。 来週、桜が満開だったらお花見に行こうかとそんな話をしていた頃だった。
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