意味のあるもの

6/35
前へ
/35ページ
次へ
ジュンたちは3人でまた課長の悪口を言っていた。悪口というほどの深刻なものではなく、酒のネタにして笑っているという程度のもので愚痴というくらいの害のない話題だ。 話がリカの不倫相手の事に触れ、私は、おそらくリカもドキッとした。 「あの生真面目な課長だってわかんないよ。いかにもマジメで出世街道まっしぐらみたいな感じだけど、意外とあの仮面の下はエロかったりして。」 ジュンは決して何かを知っていてリカに当てつけを言うような性格ではないのはリカもわかっているはずだ。 それでもリカがかすかに硬直したような気がした。 リカは三人の会話は聞こえていない風を装いさりげなく話題を変えヒソヒソ声で話し出した。 「そういえば、ね、私、この前あの人見たよ。」 と言って気づかれないように店内を指差した。 「誰?」 と高木もヒソヒソ声で聞く。 「晃司くん。」 リカが言うのを聞いて今度は私が緊張する番だった。 リカは声のトーンを落としたまま続けた。 「すごく綺麗な女の子と一緒だった。っていうか、一緒にいた子がすごく綺麗なんで気づいたんだけどさ。なかなかやるね、ああ見えて。」 みんながへえーと面白そうな顔で晃司をさりげなくチラ見した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加