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帰りの電車はものすごく混んでいて、始めはリカと離れてしまった。
今は誰とも話したくなかったのでかえってありがたかった。
途中で携帯のバイブが振動していたようだったが、混みすぎていたのでバッグから携帯も取り出せなかった。
しばらくしてやっと移動出来るほどになったのでリカと並んで立った。
「やっぱり今日は混んでるね。」
リカが言った。
「うん。やっと話出来るね。」
「もうすぐ着いちゃうけどね。」
リカは言った。
次の駅でリカは降りるのだ。
「休みはうれしいんだけど、課長に会えないのはサビシイ。」
と軽い調子で言った。いつもはあまりこんな感じでこういう事をリカは言わない。酔っているせいか、それとも課長との親密さが増しているのかもしれない。
私が考える限り、不倫は不倫でも課長も遊びと割り切っている訳ではなく真剣に恋をしてしまっているような印象だ。冷徹そうなマスクの下で意外とロマンチストな一面があるらしい。
リカの話からそううかがえた。
「すぐだよ、すぐ会えるじゃない。」
「そうだね。」
「じゃ、良いお年を。」
「良いお年を!」
リカは降りて行った。
一人になった。
気が沈んだ。
携帯がなっていたのを思い出し見てみた。晃司からの不在着信とメールだった。
「遅いから気をつけて帰るんだよ。着いたら必ず連絡して。」
というメールだった。
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