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私は晃司に超音波の画像と母子手帳を見せた。
「予定日は11月15日。」
晃司は何も言わずその画像を手に取って食い入るようにみていた。
沈黙が怖かった。
怖くて仕方がなかった。
どれくらい時間が経っただろう。
晃司は顔を上げると話し出した。
「俺みたいなのでも親になれるのかな?」
私は黙っていた。何と言っていいかわからなかった。
「俺、今まで家族の事、あまり話さなかったと思うけど。」
「うん。」
私は頷いた。
「まだ小さい頃、親が離婚して母親に引き取られたんだ。」
晃司はあまり触れたくないらしい生い立ちを語り出した。
私は頷きながら黙って聞いた。
「俺、いつも一人だった。ばあちゃんちに戻ったけど、母親は俺達を養っていくのに大変で仕事をかけもちしてたからいつもいなくて。
たまにいても、忙しいのがわかるから甘えたくても我慢してた。
ばあちゃんが俺の面倒みてくれたけど寂しかったんだ。」
私は黙って頷いた。
「いろいろあったよ。母親にも一時、男がいた時もあったような気がする。疲れ果ててたんだと思う。しばらくいなくなった時があったんだ。」
晃司は超音波の画像の縁を無意識にずっとなぞっていた。
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