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「母親が戻ってきた時にはもちろんうれしかったけど、何だかどんどんやつれていくみたいでとうとう病気にやられた。小学校6年の時にガンで亡くなった。」
晃司の母親が既に他界しているのは聞いていたが、詳しい話を聞いたのは初めてだった。
「気落ちしたのか、それを境にばあちゃんもガタガタと悪くなっていって。看病の疲れが出たのかもしれない。日常生活に差し支えるほどではないけれど、なんていうか、気力がなくなったっていうのかな。家の中の事で出来る事は俺がしてたんだけど。経済的な事とかいろいろあって、俺は今度は親父の方に引き取られる事になって。」
晃司は顔をあげて私を見た。
「妹、みただろ?あいつの母親と親父は再婚してたからそこで高校出るまで暮らしてたんだよ。」
初めて聞く話ばかりだった。
「大変だったんだね。私、平和に過ごしてきたから…」
「うん。ミサキとは掛け離れた生活だよ。」
晃司は続けた。
「いつも、いつも、一人だったんだ。温かい家庭なんて俺は知らない。もう、寂しいのは慣れっこだよ。」
「こんな俺でも父親になれるかな?子供のいい父親に。」
私は何と言っていいかわからなかった。
「でも出来るものなら家族が欲しい。産んで欲しい。こんな事していないでちゃんと結婚しよう。」
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