余韻

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立ち上がったついでに、私は歯磨きをして、 寝る準備をした。 「私、本当に、もう寝るわ。明日早いし」 「デートだっけ」 つまらなそうに言う。 「ええ。そうでございます。久しぶりにお泊りで」 ウフっと気持ち悪い声を上げて私は笑った。 「……」 高杉は、そんな私をあっさりスルー。 「もう寝んの? つまんねー」 口を尖らせて言う。 久しぶりに見た、子どもの高杉。 「もうって、言うけど今2時すぎ」 駄々っ子をあやすように、私はよしよしと頭をなでた。 子供っぽい高杉はどうしても構ってしまいたくなる……。 「まこっちゃん、本当、真面目なんだよなぁ。 早寝早起きで、 会いたくても、なかなか会えねー」 ぼそっと言った言葉は、本気なのか、冗談なのか……。 ふーーん。 高杉のドキっとする発言は、 もう、スルーしよう……。 きっと誰にでも言っているから。 ソファーから離れ、自室に向かう。 「ま、高杉が早起きすればいいんじゃん」 私に会いたいって言うならね……。 「起きれねーよ。朝の7時とか」 「じゃ、お互い様」 「だな」 妙に納得したように頷いた。 「それじゃ、おやすみ。今日はお疲れ様」 自分の部屋のドアを背にし、高杉に向き合う。 普通の挨拶。 だけど、私たちには珍しい。 「……」 じーーっと高杉が私を見る。 「なに?」 私が聞くと、 「イヤ、なんでもない。おやすみ」 高杉は、軽く手を振った。 首をかしげながら、 自室のドアを閉めた。 よくわからない。 つかみどころがない。 振り回されてばっかりだ。 ふぅ……。疲れた。 普通の同居人になるためには、 私たちは、まず、どこから修正しなきゃいけないんだろう。 高杉といると、変なホルモンが続々と出ちゃって、 いつも冷静じゃいられなくて。 ベッドに入ると、 さっき抱きしめられた腕の感覚が蘇ってきて、 また、体が熱くなった……。 やっぱ……引き返せないところに行く前に、 引っ越さなくっちゃいけないかな……。
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