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スマホがバケツに落ちる前に見たメッセージは、確か
「『引越すかも』ってところまでは見たよ」
「ふーーん」
少し考え込むように顎に左手を当てる。
「そのあとのは、見ようとしたら、
バケツに落ちちゃったからね」
あの音だけ鳴った着信のあとも、
高杉は何回か送ったらしいけど、
そのころは、もう電源すら入らない状態で……。
「本当に、引っ越すの……?」
声は少しだけ震えた。
「あぁ……。
自業自得だけど、あそこにはもう住めない。
ネットの方も一応対処したから、ファンがそこに来ることは、もうないと思う。
真琴はいても大丈夫だと思う。
迷惑かけて本当に悪かったな」
やっぱりそうなんだよね。
高杉は引っ越して、
私はいても大丈夫なんだ。
私と高杉の繋がりが減ってしまうんだ。
予想はしてたけど、
直接高杉から、聞かされたことで、
ドシンと重く胸にのしかかる。
だけど、決めたことなんだ。
私が何を言っても、きっともう変わらない。
「……」
「そっか、読んでなかったんだよな」
フゥっとため息をつく高杉。
うん。と小さく頷く、
ずっとずっと気になっていたメールの内容は、私にとって良くない話だったんだ。
高杉はフッと少しだけ寂しそうに笑うと、
もうその話題には触れず、まっすぐ私の実家に向かった。
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