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お母さんが帰ってきたのは
それから30分も経たないうちで、
私を見るなり
「あら、真琴、おかえり。クラス会楽しかった?」
と普通の態度。
晶がうまく言っててくれたんだ。
と思ったのに
「そういえば、夕方、家の前にすごい車が停まってたらしいわねー。
真琴見たー?」
あの車、近所で噂になるくらい目立ってたんだ。
「あぁ、じ、実は、私の知り合いで、
送ってもらったから」
「へぇ。高校の時の同級生?すごいわねー」
「うん、まぁ」
お母さん、言い方が軽い。
本気で気にしてないのかな。
台所に立つお母さんを手伝うように、私も台所に近寄った。
「そういえば、今日、晶、夜ご飯いらないって」
「あら、そうなんだ?
今日はお鍋にしようと思ったのに。
残念。
みんなで食べた方が美味しいのにね」
「ほんと……」
彼女とのデートってことは言わないであげた方がいいのかな。
「昨日は、晶が、
何か言いたそうだったけど……」
それは、私のことに関してかな。
お母さんは、フッと笑うと
「ま、姉弟、仲良くて良かったわ」
やっぱり何か気づいてるんだよね。
微妙に、気まずい空気が少しだけ流れた。
私が久しぶりに帰ってきたからって、
家族の生活が私中心になるわけじゃない。
家族と過ごす、なんてことない日常。
それがきっと、失ってしまったあとでは
取り戻せない、かけがえのない大切なものなんだ。
いつかちゃんと両親にも
高杉のことを話せる日が来て、
一緒に親孝行ができればいいな。
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