再び上京

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「うそ」 ボトっと鈍い音がして、 手に持っていた大きなカバンを落としてしまったことに気づいた。 体の力が抜けていく。 高杉は、もういないんだ……。 あれだけゴチャゴチャと物が置かれていた部屋は、すでにガランとしていて、 高杉が住んでいた痕跡が全てなくなっていた。 吸い込まれるように中に入った部屋で 家具も何も置かれていない空間を見つめながら、ただただボーゼンとその場から動けない。 一言も聞いてない。 昨日も一昨日も、その前もちゃんと連絡を取っていた。 いつ引越しかなんて私も聞いてないけど、 高杉も話してくれなかった。 私が怖くて聞けなかったから、高杉も話してくれなかったの……?
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