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「泣いてなんてないよ。
ただ……。
悲しかっただけ。
どうして私に何にも相談なく……」
引越しちゃったの?
私は高杉の彼女だと思ってたけど、違うの?
この間の夜は……実家での出来事は、幻だった?
ちゃんと繋がれてたと思っていたのは、私だけ?
体中から溢れてくる負の思い。
それすら言葉にできなくて、ぶつけることもできない。
そんな私をきょとんと見ている高杉に、
声を振り絞って聞いた。
「高杉の話ってなに……?」
「あーー。どうしても顔を見て言いたくてさ……。
ちょっと言いにくいんだけど……」
少しだけ躊躇しながら、高杉は言った。
「俺、引っ越したんだよね」
そんなの……
見たらわかるよ……。
「でな。そこ、ルームメイト募集してんだよね。
俺は、マコトって名前の女がいいんだけど」
「え……?」
あまりにも軽く告げられた言葉に体が硬直してしまった。
頭の中で反芻する。
これって、あのときの私の勘違いになぞらえた……。
「これ、年末にLINEしたんだけど、
一向に既読にならなかったんだよな……」
ポツリと照れ臭そうに高杉は言う。
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