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「うそ……」
バケツに落ちて見れなかった幻のメッセージは、
暗い話じゃなかった。
私たちの関係に前向きな話。
「な、なんで、この間、言ってくれなかったの……?
引越すって聞いて、私たちもう終わりかもって、悩んで、苦しくて……」
「へぇ……。
真琴は、そんな風に思ってたんだ」
高杉はニヤっと意地悪く笑う。
その自信に満ちた表情、すごく悔しい。
悔しいけど嬉しくて、
泣きたくなんてないのに、涙腺が壊れたみたいに目から涙が溢れていく。
「ルームメイトって言っても、いろいろ込みのルームメイトだけどな」
正志さんと住むことを考えたとき、
あれだけ同棲はまだ早いって思ってたのに、
高杉となら『いろいろ』の意味を考えただけで、
胸がいっぱいになる。
だけど私から出た言葉は、
「……じゃ、やめとこうかな」
号泣するほど嬉しいのに、
本当に私は素直じゃない。
でも高杉は、私のそんな素直じゃないところを
ちゃんとわかっててくれる。
私が言ったことも気にせず、ハハっと笑った。
「じゃあ、これから下見に行きますか?お客さん」
私が頷くのがわかっていたように、
高杉は余裕の表情で私の手を取った。
「行こう」
帰ってきてまだほんの数分だけど
私たちは手を繋いだまま、玄関に向かって歩き出す。
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