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「広っ……」
ダブルベッドが置かれていても、
思わず口に出てしまうほど、広い。
10畳は余裕でありそうな空間。
「ん?」
高杉の視線が私の方に向いたのがわかったけど、
私は部屋を覗き込んだまま。
「こんな広い部屋、私が使っていいの?」
「あ、そーだよな……。
そっちだよな……」
そっちってなんだろう?
と思って高杉を見ると、
顔を少し赤くして、戸惑ったように見ている。
「やっと名前呼んでくれたのかと思った……」
広って、ヒロ……?
思わずフッと吹き出して笑った。
「いつになっても呼んでくれねーし」
高杉、名前を呼ばれたかったんだ?
ちょっと拗ねてる高杉がかわいい。
「だって、女みたいなんだもん。裕美さん」
「それ言うならお前だって、マコトだろ?」
こんなやりとり、前もあったな。
アパートに越してきた初日だった。
今は遠い昔のように感じる。
なんだか懐かしくて、顔を見合わせて笑った。
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