再び上京 #2

9/12
前へ
/40ページ
次へ
「広っ……」 ダブルベッドが置かれていても、 思わず口に出てしまうほど、広い。 10畳は余裕でありそうな空間。 「ん?」 高杉の視線が私の方に向いたのがわかったけど、 私は部屋を覗き込んだまま。 「こんな広い部屋、私が使っていいの?」 「あ、そーだよな……。 そっちだよな……」 そっちってなんだろう? と思って高杉を見ると、 顔を少し赤くして、戸惑ったように見ている。 「やっと名前呼んでくれたのかと思った……」 広って、ヒロ……? 思わずフッと吹き出して笑った。 「いつになっても呼んでくれねーし」 高杉、名前を呼ばれたかったんだ? ちょっと拗ねてる高杉がかわいい。 「だって、女みたいなんだもん。裕美さん」 「それ言うならお前だって、マコトだろ?」 こんなやりとり、前もあったな。 アパートに越してきた初日だった。 今は遠い昔のように感じる。 なんだか懐かしくて、顔を見合わせて笑った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1092人が本棚に入れています
本棚に追加