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正志さんは私のおでこに手を当てようとして、ギリギリのところで止めて、また引っ込める。
そしてゆっくりとした口調で聞いてきた。
「……今日、あいつはこれないの?」
「……高杉のこと? こないよ。仕事だって」
「そっか」
「私、もう全然大丈夫だよ。
立てるし歩けるよ」
私が上半身を起こそうすると、また正志さんの腕で制された。
「寝とけって」
困ったように笑う。
でも、これ以上心配かけたくない。
「だって……。
正志さん、渡部主将の引退試合を観に来たんじゃないの?
行ってあげなきゃ、終わっちゃうかも。
だから……」
「置いてけないよ」
私の言葉を遮るように言った。
「私は大丈夫。亮史が戻ってきてくれるし、
ちょっとだけでも、行ってきて」
「……俺が、ここにいたいんだけど。
やっぱ迷惑かな……」
さっきは私に触れるのを躊躇してた手の平を、今度は躊躇することなく私の頬に近づけ触れた。
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