14.期待するから…

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悟はカツ丼定食、私は日替わり御膳を注文した。ドリンクバーに行って悟と自分にアイスコーヒーを取ってきた。 平日の郊外のファミレスは中年や初老の女性達のたまり場だ。あちこちで絶え間無いおしゃべりがやかましい。 その中で私たちのテーブルだけは静かだ。料理が給仕されて悟と私は黙々と食べた。 食後は眠くなりそうだしホットコーヒーを二人分持ってきて飲んだ。考えてみれば悟と向かい合い食事したりコーヒーを飲んだりするのは実に久しぶりだった。 ふと変わってしまったのは悟ばかりではなく自分自身もだと思った。 ずっと以前はこんなふうに悟と向かい合っているとただそれだけでうれしくて胸がいっぱいになった。そしてなぜか不安になった。 今は悟を見つめていてもそんなふうに掻き乱されるような強い感情は沸いて来ない。それはただ消えてしまった。 悟もきっとそうなんだろう。私への強い思いは消えてしまったんだろう。 そんなことを思っても悲しいというより諦めのような感情が静かにみちてくるだけだった。
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