11.悟とのこと

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「ただいま。」 口から出た言葉が暗がりに飲み込まれた。いつものように誰もいない部屋。悟はまだ帰っていない。 一人は寂しい。でも二人でいるのに寂しさを感じるほうがやり切れない。最近は寂しさにも慣れた。 一緒にいられない、構ってくれない、つまらない、寂しい、そんな感情が原因で悟と喧嘩をすることもほとんどなくなった。 平気になったのではない。諦めたのだ。以前はそんな喧嘩ばかりしていた。 「私は悟の何なの?」 「私たちどうして一緒にいるの?」 「寂しい。」 「もっと一緒にいたい。」 「どうして構ってくれないの?」 「私のこと好きじゃないの?」 喧嘩の度にそんな気持ちを悟にぶつけてきた。そのたびに返ってくるのは 「忙しいんだから仕方ないだろ。」 そう言われると何も言えなくなった。頭で理解しようとしても涙が止まらなくなると悟は私を抱いた。 それは一時的に痛みを感じさせなくする鎮痛剤のように私の感覚を麻痺させた。痺れた頭のどこかで執拗に響き続ける思い。 「このままでいいの?幸せじゃないでしょ?」 そんな思いがよぎるたび私は悟にしがみついてセックスに溺れた。いつも抱かれていないと不安だった。
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