13.ぱっとしない男の子

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「すごく似合う。」 私はおだてじゃなく言った。 「ありがとう。」 池田はちょっと照れ臭そうに笑った。 「眼鏡一つで変わるもんだね。すごく男前。早く出来るといいね。見立てた私に感謝して。」 「うん。」 自分でも気分がよかったのか照れながらも素直だ。 「あとはヘアスタイルがイマイチぱっとしないね。そのツンツンしたの、好きなの?」 「なんで?いいじゃん。似合わない?」 「あんまり。もう少しだけ長めっていうかナチュラルな感じの方がいいと思う。」 「そうかなぁ。」 池田はピンと来ない様子だ。 「いつもは美容室じゃないの?」 「1000円カットだよ。」 「じゃあ見本を持ってってこんな感じにしてって言ってみれば?」 「うーん。俺そういうの苦手。」 「かもね。」 そうかもしれない。美容師相手にそんなことを言っている池田は想像しにくかった。
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