13.ぱっとしない男の子

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入ったラーメン店はしかもとんこつラーメンだった。私は匂いだけで酔いそうな気がした。 「とんこつかぁ。食べられるかなぁ。」 「俺はこっち出てくる前はラーメンって言ったらとんこつだったんだよ。」 「どこだっけ?」 「山口。」 「ふぅん。山口ってとんこつなんだ。」 「下関だからね。ほとんど博多だから。」 「そうか。私とんこつは食べたことない。元々ラーメン好きじゃないから、ましてとんこつなんて食べようと思ったことないし。」 「うまいのになぁ。食べてみなよ。食べられなかったら俺食べるから。」 「いいよ。食べる。」 私はしかたなしに一番あっさりしているというのを注文してみた。ラーメンはすぐに出てきた。 「いただきます!」 池田はおいしそうに麺をすすっている。私もなんとか頑張って麺だけでも食べようと思った。申し訳ないけれどスープは残すことにした。 「スープがうまいのになぁ。」 池田は言った。 「でも無理。」 私は店員を憚って小さな声で言った。
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