10.孤独な者たち

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4月にしては暖かい夜だった。生温い南風が吹いていた。日中は半袖でいられそうなほど暖かく夜になっても冷え込んでこなかった。 正美の家のリビングにみんなで集まっていると熱気がこもっているような気がした。 「暑い。」 池田が言いながらシャツを乱暴に脱ぎ捨てインナーに着ていたTシャツ一枚になった。 正美は池田の傍に脱ぎ捨てられたシャツを拾うとハンガーにかけた。 「まったく男臭いったら。ああ男臭い。男臭い。」 顔をしかめながらも池田に笑いかける。その様子はまるで世話女房そのものだった。 いやもっと危険でエロティックな感じ。池田に男を感じていて「欲しがっている」みたいになまめかしい感じがした。 正美は池田を好きなのだろうと確信した。ただ彼女自身、自分の気持ちに気付いてしまうのを怖れているような印象。 池田の方は正美の気持ちなどまったく意にも介していない様子だったからなんとなく正美が痛々しく感じられた。 それとも二人の間にはすでに男女の関係があるのかと勘ぐった。もしかしたらあるのかもしれない。 それにしても池田は幼稚すぎる。のめり込むのは危険だと思った。
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