19.行きつけの店で

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「あ……」 入口の方から家電売場の大倉と山本、それから雑貨売場の市田が入ってきた。三人は私と池田に気づいてこちらにやってきた。 「よお。お疲れ。あれ?鈴木さん待ちじゃないの?」 大倉が私に話しかけてきた。 「ううん、今日は声かけられてないよ。」 「あれ?鈴木さん、川島さんも声かけるって言ってたんだけどな。」 さっきから大倉は不思議そうに池田をみていた。大倉は (鈴木さん待ちをしているならなんでこの場に池田がいるんだろう?) と訝っているに違いなかった。 鈴木との飲みの席に池田がいたことはなかった。私が知る限りは。職場でも立場や年齢が違うこともあるがあまり二人が関わることはない様子。 職場では少数派の正社員とはいえ鈴木は池田の直属の上司でもないわけで親しくなくてもおかしくはない。ただそれだけの理由ではない気がした。 池田は先輩の立場の者から見ると未熟なくせに生意気な態度が鼻につくのは否定できない。 先輩から可愛がられるタイプではない。そういう意味で池田は本当に不器用で損していると思った。 根はそれほどすれているわけでもなく意外と素直でかわいいところもあるのに人に理解してもらえない。それはほぼ本人の態度、素行が問題ありだからだ。
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